科学と文化の対話からうまれる絵画の素材研究プロジェクト

プロジェクト概要

我が国の伝統的な絵画は、身の回りのさまざまな自然素材を基にした材料が使用されてきました。このような文化財を次世代に保存・継承するためには、天然由来の材料の性質を精確に捉える必要があります。伝統的絵画の多くは、絵画そのものを支える板や壁、紙、繊維などの基底材、鉱石や土、動植物に由来する色料、色料と基底材を接着する膠などの接着剤から構成されています。いずれの素材も光や水、大気などの外的要因の影響により分解され絵画の劣化の原因となります。劣化した文化財の保存・修復については、本来の手法や材料で修理することが基本であるため、時代背景を含めた材料に関する知見についての研究の更なる進展が期待されています。一方で、修理に不可欠な天然素材の生産者や用具製作者等の高齢化、減少、後継者不足が深刻な課題となっています。
本プロジェクトでは、こうした伝統的な絵画の材料について、文化的側面と科学的側面の両面からアプローチを試み、その対話からうまれる新たな視点からの素材研究を推進することで分野融合的な体系化の基盤作りを目指します。

メンバー

宇治広隆 奈良教育大学 理科教育講座 個人紹介ページ
池田藍子 奈良教育大学 美術教育講座 個人紹介ページ

個別プロジェクト

奈良地域の文化資源の総合的保存・活用に関する研究

概要:本研究は、奈良地域に点在する文化財に着目し、文化施設や個人で保存される有形の「文化財そのもの」だけでなく、文化財を造るための材料・工具や伝統技法などの周辺要素も含め「文化資源」と見なして総合的にその価値を分析し、保存・継承さらには活用を大学と地域の関係機関が協同して実践し展開するモデル構築を目的とする。
期間:2024年11月 ~ 継続中
メンバー:宇治, 池田, 他 学外共同研究者, 学内共同研究者
備考:本プロジェクトの実施に並行して、関連した助成金等に申請中です。

科学的解釈に基づく伝統的技法と素材の体系化の基盤作りとESD教材化に関する研究

概要:本研究は、文化財や伝統工芸品などに見られる伝統的技法や素材に内在する科学的要素を解明し、得られた知見を体系化することで次世代に保存・継承するための基盤作りをすると共に、教員養成大学の理科教育と文化遺産教育を包摂する形での持続可能な開発のための教育(ESD)に資する教材として応用することを目指す。
期間:2025年4月 ~ 継続中
メンバー:宇治, 池田, 井田 大地(共同研究者, 京都大学大学院 工学研究科高分子化学専攻)
備考:本プロジェクトは R7年度 科研費 基盤研究C (25K06623) の助成を受けて実施します。

科学的解釈に基づいた文化財の伝統的技法と素材の研究及びネットワーク作り

概要:文化財に使用される絵画材料の伝統的技法と素材を科学的観点を交えて調査及び研究し、更に得られた知見を次世代に継承できる形に体系化することを本異分野融合プロジェクトの目的とした。2024年度は、本異分野融合プロジェクトの初年度のため、調査研究などの素地作りを行った。また、学内外の関連分野の教員や学外機関の専門家等とのネットワーク形成のためのシンポジウムを開催した。
期間:2024年5月 ~ 2025年3月
メンバー:宇治, 池田
関連ページ:第1回公開シンポジウム, 第1回研究会
備考:本プロジェクトは 奈良国立大学機構 奈良教育大学 R6年度理事長裁量経費 異分野融合プロジェクト事業の助成を受けて実施しました。

イベント

2024年10月13日 第1回公開シンポジウム「科学からみえる伝統のかたち」
2024年10月13日 第1回研究会

リンク

奈良教育大学
奈良国立大学機構